相続税算定の不動産鑑定について
個性の強い土地は不動産鑑定の採用で相続税を安く抑えられる可能性がある
土地は人間の顔と同じ様に個性を持っています。全く同じ土地というのは存在しません。個性の強い土地については、不動産鑑定を採用する方が、相続税路線価を基礎とした画一的な評価方法よりも相続税を安く抑える可能性があります。
もちろん、相続税路線価を基礎とした評価方法を間違っているなどと言うわけではありません。普通の土地であれば、簡易かつ明快、税負担の公平性も担保されると思いますが、個性の強い土地については、必ずしも妥当する評価方法とは言えないと思うのです。
さて、個性の強い土地とはどんな土地でしょうか?
無道路地及びそれに準ずる土地
原則として建築基準法上の道路に間口2m以上接していなければ、建物を建てることはできません。
無道路地とは、建築基準法上の道路に全く接していない土地で、それに順ずる土地とは少しは道路に接しているけど2mには満たないという土地です。
相続税路線価を基礎とした評価では、無道路地の場合にも一定割合を乗じて評価をすることが基本になります。最大に減価させる割合も決まっています。
この評価方法、大雑把に言えば、無道路を解消するため、道路に接するように通路部分を隣接所有者から買収する場合を想定し、袋地(旗竿地)となった形の土地価格から用地取得に伴う費用を控除するというやり方。
この方法では、通路取得部分の価格は路線価を基礎とするため、かなり低位となります。
現実には、隣接地の一部を買収するため、隣接地の所有者としては不合理な分割になり、標準的な価格水準よりも高くなければ売らないでしょうし、また用地取得の不確実性についても考量すべきだと思います。
この方法では市場的な観点が介在し得ないという点で、無道路地及びそれに準ずる土地の評価額は高く求められる結果になる可能性があります。
底地(借地権が付着している場合における土地の所有権)
底地は、不動産の鑑定評価では、収益価格を標準として評価をします。なぜなら、底地を所有していても自ら利用できるわけではありませんから、仮に第三者がその底地を買う場合には地代による儲けに着目せざるを得ません。昔から借地している場合の地代は低廉な場合が多いため、収益価格は低位に求められる結果となります。
それは相続税路線価を基礎にして割合を乗じて求める方法に比較して理論的であり、また低位になる可能性が高くなると思います。
実際に、底地を売りに出した場合に底地買取業者以外に第三者が購入することは殆ど期待できません。
住宅の背後に傾斜のきつい裏山があるような土地
例えば、市街化区域内の住宅の背後に傾斜のきつい裏山(裏山といってもちょっとした竹藪みたいなイメージで、通達では純山林として認められない程度の傾斜角)があるような土地。
代々、農家(地主)である本家の住宅は背後に小さな裏山を抱えている場合があります。仮に住宅部分と裏山部分とを一体として開発し区画割して建売住宅として分譲できることが市場的にみて合理的と判断されるならば、不動産鑑定評価では開発法を適用して評価を行ないます。単純に言えば、その一体地を開発し販売することが可能な販売総額から、造成工事費用などの経費を控除した額が、一体地全体の土地価格となります。
裏山部分の造成工事費が嵩めば、全体の土地価格は安くなるということです。
宅地部分は宅地として相続路線価で評価し、裏山は市街化区域内林地として評価をする場合に比べて安くなる可能性を有しています。
当然、この販売総額や造成費については根拠をもった合理的な価格でなければなりませんが、弊社では造成工事費などについて建築士が積算をして根拠を示して評価をしますから、問題となることはありません。
市街化調整区域内にある土地
市街化調整区域は原則として建物を建てることはできませんが、一定の条件で建物を建てられることがあります。
同じ市街化調整区域内の土地であっても、建物を建てられない土地と建物を建てられる土地とでは、その価値に雲泥の差が生じます。
問題は、相続時において建物が建っており、固定資産税の地目も宅地となっている場合に、その状況のみで判断して、建築可能な「宅地」として相続税評価をすることです。
実際にあったケースですが、市街化調整区域の土地に作業所が建っており、固定資産税の地目も宅地となっているため、その土地の相続税算定にあたり地主の代理人が「宅地」として評価した事例。
後に、弊社で調査をすると、確かに建物は建築確認を受けて合法的に建築されたものでしたが、実は「一時仮使用」のための建築確認。仮使用の建物を壊さず、永続的に使用していた結果、表面的には建物の建築が可能な「宅地」に見えたわけだ。もちろん、この建物は違法であるため、現実的には住宅等の建築ができない土地でしかありません。
崖地を有する宅地
相続税路線価を基準とした評価では、その崖地面積割合を算定し、崖の傾斜方位に応じた減価をすることとなりますが、その減価率(崖地補正率)は最大でも50%程度。土地は利用できるから価値があるもので、崖地のようにとても利用効率が悪い土地については、市場性に照らして減価額を算定する必要があります。全く買い手がいない土地、即ち、価値がゼロに限りなく近い崖地を含む土地も現実にはあります。
これらのケースはほんの一例に過ぎません。
財産の中で最も高額となる不動産について、いろいろな評価方法を検討することは、円満に相続手続をするための一つの手段となると思います